近年、癌の罹患率(がんと診断された患者数)は増え続けており、生涯で2人にひとりが何かしらのがんと診断されています。がんで苦しまないためには、早期発見が重要ですが、残念ながらがんが進行した状態で見つかるケースも多いのが現状です。初期のがんには症状が特になく、放置されることが多いためです。
一方で“早期発見が重要”と言いますが、”どんな検査を受けたらよいのか分からない”“どの医療機関に受診したらいいか分からない”という方も多いのではないでしょうか?日本は、非常に医療・福祉が発達していますので、まずはお近くの医療機関や検診センターなどにご相談いただければと思います。
前立腺がん
前立腺がんとは
前立腺は、男性にしかない臓器です。前立腺液を分泌して、精子の運動・保護や、排尿に関与しています。この前立腺にできる前立腺がんですが、罹患数(がんと診断された患者数)は年々増加しており、男性で最も多いがんと言われています。
がんが進行すると様々な症状(血尿、頻尿、排尿障害、疼痛など)が認められますが、初期のがんには特に症状はありません。ですので、早期にがんを発見するためには、普段から検診等を受けることが重要です。
PSAについて
PSAとは、「前立腺特異抗原(Prostate-Specific Antigen)」の略語で、前立腺にしか存在しない物質であり、血液中にどのくらい含まれているかを調べることで、前立腺の異常を知ることができます。これは「腫瘍マーカー」として前立腺がんの診断および治療効果の判定に使用されています。
採血だけで行える非常に簡便な検査ですので、前立腺がんのリスクが高くなる50歳を超えたら、定期的にPSA検査を受けることをお勧めしています。各自治体で毎年決まった時期に「前立腺癌PSA検診」をやっていることが多いので、問い合わせてみるのもよいでしょう。
東大和市の前立腺PSA検診
前立腺がん検診(単独)|東大和市公式ホームページ
PSAが高い方へ
PSAは、前立腺癌以外でも、前立腺肥大症、前立腺炎などで高くなります。尿検査、エコー検査、CT検査なども行い、総合的に判断します。PSAの値が高い場合(4ng/ml以上)、前立腺の組織の一部を針で採取して顕微鏡で詳しく調べる針生検を行い、がんの有無を確認します。
前立腺癌の治療
進行の程度によって異なります。早期がんで転移もなく、患者様の年齢も若いという場合は根治的治療として、手術療法や放射線治療が選択されます。また高齢者の患者様などで、上記の治療が困難と判断されるとホルモン療法(男性ホルモンを抑制する)が選択されます。それでも効果が乏しいという場合は、化学療法(抗がん剤)が検討されます。
膀胱がん
膀胱がんとは
膀胱の粘膜に発生する悪性腫瘍を膀胱がんといいます。高齢(60~70代)の男性患者が多いのが特徴ですが、近年女性の罹患率も増加傾向にあります。発症原因は特定されていませんが、喫煙がリスク要因とされています。
早期の癌であっても、血尿を認めることが多く、とくに無症候性(痛みなどの症状を伴わない)の血尿を認めた場合は、早期に病院を受診することをお勧めします。また検診で尿潜血を指摘された場合も、お近くの医療機関を受診するようにしましょう。
膀胱がんが疑われる場合、膀胱鏡検査(尿道から内視鏡を挿入し、膀胱内部を調べる)や超音波検査、CT検査などを行います。
膀胱癌の治療
膀胱がんと診断された場合、治療の大半は手術療法です。まず、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)と呼ばれる診断と治療を兼ねた手術が行われます。
再発防止のためにBCGや抗がん剤を膀胱内に注入する場合もあります。
また進行している場合は、膀胱全摘や抗がん剤治療が行われます。
尿管がん
尿管がんとは
尿管に発生するがんで、高齢男性に多く発症し、喫煙がリスク要因とされています。
膀胱癌と同様に、無症候性の血尿を認めることが多く、がんが進行して水腎症(尿の流れが悪い状態)が発生すると腰背部や側腹部に痛みが現れることがあります。血尿が確認された場合、一度医療機関を受診することをお勧めします。
尿管がんが疑われる場合、尿細胞診(尿中の癌細胞の有無を調べる)や、腹部超音波検査、CT検査で尿管の腫瘤の有無を調べて診断します。
尿管がんの治療
進行度に応じて治療方法が異なります。転移がない場合は手術療法が選択されます。具体的には、腎尿管全摘除術と膀胱部分切除術が行われます。転移がある場合は、抗がん剤治療(GC療法やM-VAC療法など)が行われます。
腎臓がん
腎臓がんとは
腎実質に発生するがんで、50~60代の男性に多く発症し、高齢になるほどリスクが高まります。
発症初期にはほとんど症状が現れません。そのため健康診断などの画像検査で偶然発見されることが多いです。病状が進行すると発熱、体重減少、倦怠感、貧血などが見られ、血尿や腰背部の痛み、腹部のしこりなどが現れることもあります。
腎がんが疑われる場合、CT検査、腹部超音波検査などで腫瘤の有無を確認します。
腎臓がんの治療
治療では、外科的切除が有効とされるため、遠隔転移がないことが確認されれば手術療法が行われます。この場合、腫瘍がある腎臓を全て切除する根治的腎摘除術、小さい腫瘍(4cm以下)では腎の一部を切除する腎部分切除術が行われます。手術が難しい場合は、薬物療法(分子標的薬、免疫療法による免疫チェックポイント阻害薬やサイトカイン療法)が行われます。
精巣がん
精巣がんとは
精巣に発生する悪性腫瘍を総称して精巣がんと呼びます。20~30歳代に多く、その頻度は10万人に1~2人程度です。
一般的な症状は、痛みがなく陰嚢が腫れて大きくなる無痛性陰嚢腫大です。精巣がんが進行すると肺や肝臓、脳などに転移し、各部位で腫瘍関連の症状が見受けられるようになります。
精巣がんが疑われる場合、腹部超音波検査などの画像診断を行い、精巣腫瘍の有無を確認します。さらに転移の可能性を確認するためにCTなどの画像検査、腫瘍マーカーの上昇度を確認するための血液検査も行います。
精巣がんが強く疑われる場合、病理診断と治療を兼ねた高位精巣摘除術を行います。この手術で腫大した精巣を取り除きつつ、摘出した精巣から腫瘍の種類や進行度を調べ、その後の治療方針を決めます。
精巣腫瘍の大部分は悪性の胚細胞腫瘍で、セミノーマ(精上皮腫)と非セミノーマ(胎児性がん、卵黄嚢腫瘍など)に分類されます。セミノーマの場合、進行度に応じて経過観察、放射線療法、化学療法が行われます。一方、非セミノーマでは、進行度により経過観察、化学療法、後腹膜リンパ節郭清などが実施されます。どちらの場合でも遠隔転移が確認されれば、化学療法が用いられます。